最近では多種多様なサプリメントなども店頭に並び、「葉酸」も皆さん一度は聞いたことがある栄養素ではないでしょうか。
では葉酸とは一体どのような栄養素なのでしょうか。
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管理栄養士 岩井里香 |
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管理栄養士。これまで病院や企業で数多くの食事・栄養指導を行う。現在もクリニックにて、患者さんへの栄養指導に従事。 |
葉酸はほうれん草から発見されたといわれており、その名のとおり植物の葉に多く含まれています。
野菜の他にも果物や大豆、レバーなどにも含まれています。
別名ではプテロイルグルタミン酸、ビタミンM、ビタミンB9とも呼ばれます。腸内細菌によって体内でも作られていることも特徴の1つです。
生物が生きる上で欠かせないのが、DNAやRNAです。
これらは細胞の核にあり、細胞やタンパク質を作る際に必要な遺伝情報をもっています。
実はこのDNA・RNAを作る助けをしているのが葉酸なのです。
そのため不足すると細胞分裂や細胞の増殖や細胞の再生がうまく行えなくなってしまいます。
血液の成分である赤血球は体中に酸素を届ける役割を果たしています。
赤血球の寿命は4ヶ月といわれ、私たちは常に新しい赤血球を骨髄でつくっているのです。
赤血球がアミノ酸や脂肪酸、鉄などを材料にして成長する段階で、葉酸はビタミンB12とコンビを組み、協力して働きます。
上記のような役割を体内で果たしている葉酸ですが、摂取するとどのような効能を得ることができるのでしょうか。
私たちの体に特に重要な4つの効能をご紹介します。
葉酸には胎児の発育促進や機能正常化作用があります。
葉酸は赤血球を作る材料として働くことから、十分に摂取することで健康な赤血球を作ることができます。
貧血には様々な原因や種類がありますが、葉酸不足からなる巨赤芽球性貧血の予防に効果的です。
動脈硬化や骨粗鬆症、老化の原因に共通して関係しているのが活性酸素。
いわば「体のサビ」と呼ばれるものです。
そして葉酸は、この活性酸素を作る材料を増やさないように働いてくれます。
葉酸は動脈硬化からくる脳梗塞や心筋梗塞、骨粗鬆症からくる骨折などを未然に防ぎ、老後を豊かに過ごすためにも大切な栄養素です。
特に骨粗鬆症は閉経後の女性の多くに見られます。また活性酸素は、喫煙やアルコール、紫外線やストレスからもつくられます。
これらが当てはまる方は特に意識すると良いでしょう。
ビタミンB群の一種である葉酸は、粘膜を保護する働きがあります。
そのため、口内炎予防や肌荒れ防止、胃もたれ防止などの効果が望めるでしょう。
では、一体どれくらいの葉酸を摂取すればよいのでしょうか。
実は葉酸には「ポリグルタミン酸型」「モノグルタミン酸型」と形の違いが存在し、食事由来の葉酸と、サプリメント由来の葉酸では吸収率が大きく異なるのです。
なるべくならサプリメントは使用せず、食事から摂りたいという方もいますよね。
食品中の葉酸は「ポリグルタミン酸型」といい、酵素タンパク質と結合した形で存在します。
この酵素タンパク質は調理段階や胃酸によって葉酸から離れ、葉酸は「ポリグルタミン酸型」から、いわば純正 の「モノグルタミン酸型」に形を変え吸収されます。
一方で、サプリメントの葉酸は「モノグルタミン酸型」のため、効率よく体内に取り込むことができます。
摂取した量の75%程度が体内で利用できると言われています。
葉酸サプリの選び方はこちらの記事にしてみて下さい。↓
1日に推奨される葉酸の摂取量と過剰に注意したい耐容上限量をまとめました。
年齢
|
葉酸(μg/日) | |
推奨量 | ※耐用上限量 | |
1~2(歳) | 90 | 200 |
3~5(歳) | 100 | 300 |
6~7(歳) | 130 | 400 |
8~9(歳) | 150 | 500 |
10~11(歳) | 180 | 700 |
12~14(歳) | 230 | 900 |
15~17(歳) | 250 | 900 |
18~29(歳) | 240 | 900 |
30~49(歳) | 240 | 1,000 |
50~69(歳) | 240 | 1,000 |
70以上(歳) | 240 | 900 |
※ 耐容上限量は「モノグルタミン酸型の葉酸」として算定されている。推奨量は食事性の葉酸として算定。
平成29年度の国民健康・栄養調査では20代の男女の平均摂取量は240μg/日を上回っていることから、通常はサプリメントを使わずに食事から十分に摂取することは難しくないことがわかります。
ただし野菜不足の方は注意が必要です。
たとえば、1日にほうれん草小1束(126μg)とブロッコリー3〜4房(126μg)の摂取で推奨量240μgが達成できます。
ほとんどの人が必要量を満たすと推定される1日の量(充足率97〜98%)のこと。
ほとんどの人が健康障害を起こす危険がないと推定される習慣的な摂取量の上限のこと。
妊娠を計画している女性、または妊娠の可能性がある女性の摂取量は注意が必要です。
赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスク低減のために、食事からの240μgの摂取に加えて、補助食品やサプリメントから400μg/日を摂取することが望ましいといわれています。
仮に付加量の400μgを食事から摂取しようとすると、吸収率を考慮し800μgの摂取量を目指すとよいでしょう。
以前は、葉酸摂取の重要性は妊娠初期のみとされていましたが、最近では妊活中~産後まで意識して摂取する必要があることがわかっています。
サプリメントなどで過剰摂取をした場合には発熱や蕁麻疹といった健康障害の報告があります。
しかしながら食事からの葉酸摂取では過剰になる可能性は非常に低く、心配いらないでしょう。
サプリメントを服用される場合は、容量を守り、複数のサプリメントを併用される場合には成分表示を確認した上で服用量を決めるようにしましょう。
体にとって欠かせない、妊活や妊娠中の女性にとっては不可欠な葉酸ですが、摂取量が不足するとどうなってしまうのでしょうか。
貧血といえば鉄分不足をイメージする方が多いでしょう。しかし、鉄分が十分に足りていても貧血になりうるのです。
それが巨赤芽球性貧血です。
鉄分が不足して起こる鉄欠乏性貧血は、赤血球の数が不足して起こるのに対し、巨赤芽球性貧血は健康な状態の赤血球をつくることができなくなり起こる貧血です。
動脈硬化の原因となる成分の一つがホモシステインです。
これはアミノ酸の一種であるメチオニンからできた老廃物ですが、体の中でビタミンなどを利用しながらメチオニンにリサイクルされます。
しかし葉酸が不足することでリサイクルがうまくできず、ホモシステインが増えてしまうのです。
するとホモシステインが血液中で活性酵素を生み出し、動脈硬化を引き起こしやすくなります。
また活性酸素が増えることで骨粗鬆症にもつながります。
妊娠初期に葉酸が欠乏することで神経管閉鎖障害という神経管の形成異常のリスクが高まります。
これは主に無脳症や二分脊椎、髄膜瘤、他にも口唇裂や先天性心疾患が挙げられます。
そのため、神経管の形成時期に十分な葉酸摂取が求められます。
受精後、受精卵が着床して妊娠が成立すること。
粘膜を健康に維持する働きをもつのがビタミンB群です。
口内炎や肌荒れ予防にチョコラBBなどのビタミンB群のサプリメントを服用されている方もいますよね。
あまり知られていないのですが、葉酸もビタミンB群の仲間であるため、肌や粘膜の健康を維持する上で欠かせません。
なかには特に葉酸欠乏に注意したい方がいます。当てはまる方は特に意識して摂取を心がけましょう。
不足に気をつけたい葉酸ですが、どのような方法で摂取するのが効果的なのでしょうか。
まずは葉酸がどのような食材に多く含まれているのかを見てみましょう。
なお、具体的に食事をする際は次の数値で確認すると良いでしょう。
焼き海苔は1枚(3g)摂取で57μg、鶏レバー焼き鳥は1本で390μg、ブロッコリーは3〜4房(60g)で126μg、モロヘイヤは1/4袋(55g)で138μg、菜の花1/4袋(50g)で170μgとることができます。いちごは10個(100g)で90μgです。
他には、キャベツ、春菊、ほうれん草、アスパラガスなどに多く含まれます。
葉酸には次のような性質があります。
たとえばモロヘイヤなどの葉物野菜をゆでると約40%の葉酸が流れ出てしまいます。
なかには加熱が必要なものもありますが、ゆでるよりは炒める、または電子レンジをうまく活用すると良いでしょう。また熱を加える場合はなるべく短時間に素早く仕上げましょう。
葉酸はビタミンB12と協力して働くため、食品でも一緒に食べると効果的です。
ビタミンB12は肉や魚など動物性食品に多く含まれます。
ここからは自炊する人へ向けて、葉酸を効率的よく摂取できる料理をご紹介していきます。
朝食にぴったりなお手軽和食メニューです。
水に溶ける性質の葉酸でも味噌汁であれば無駄なく摂取できますね。熱は加えすぎないよう、手早く仕上げましょう。
シチューには蒸し調理をしたブロッコリーを最後にトッピングすることで、調理で壊れる葉酸を最低限に抑えましょう。
シチューの鶏肉でビタミンB12の摂取もできます。冷蔵庫の余った野菜は何でも入れて具だくさんシチューにしましょう。
サラダは緑黄色野菜摂取を重視するためサラダほうれん草をチョイス。葉酸を効率よく摂取できます。
自炊が大変だという方や、外食の際にも葉酸を効率的よく摂取したいという方には次のメニューがおすすめです。
葉酸が豊富なアボカドとビタミンB12が豊富なエビの相性抜群なコンビのパスタです。
栄養素が偏りがちなカフェランチですが、アボカドには葉酸以外のビタミンや食物繊維・良質な油が豊富に含まれており、美容に敏感な女性が積極的に摂りたい食材です。
サラダを追加できるとさらにバランス◎です。
葉酸が豊富なキャベツやブロッコリーが入り、野菜が豊富なメニューです。
チキンソテーでビタミンB12の摂取もバッチリです。
ごはんは雑穀米を選択すると食物繊維をプラスでき、腸内環境を整えるのに効果的です。
葉酸が豊富に含まれる枝豆とほうれん草がふんだんに使われたサラダです。
ドリアの帆立にはビタミンB12が含まれます。雑穀米を使用しており、腸内環境を整えたい方にもおすすめです。
※ここでご紹介したメニューはすでに販売が終了している可能性があります。あらかじめご了承ください。
“妊婦さんが摂るべき栄養素”というイメージがある方が多いと思いますが、皆が積極的に摂ることで将来の健康に役立ちます。
また、葉酸は腸内でも作られるため、常に良い腸内環境を保つ、すなわちバランスの良い食・生活習慣を続けることが大切です。
今日から皆さんも葉酸摂取を心がけましょう。