潤いのある髪の毛やハリのある肌をキープするためにたんぱく質は欠かせません。
下記の食事はどれも美意識が高いイメージですが、このなかで1つでも当てはまる方はたんぱく質不足に要注意です。
タンパク質不足が肌荒れやシミ・シワの原因を作っているかもしれません。
「朝食はスムージーやフルーツのみ。」
「夕食はサラダ中心でヘルシーに。」
「プロテインバーやプロテインドリンクを食事の代わりに。」
「糖質制限でダイエット。」
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管理栄養士 岩井里香 |
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管理栄養士。これまで病院や企業で数多くの食事・栄養指導を行う。現在もクリニックにて、患者さんへの栄養指導に従事。 |
目次
私たちの体は約10万種類ものたんぱく質で作られています。
たんぱく質は、骨格や筋肉、血液、毛髪、皮膚、内臓など身体中のあらゆる組織の材料となっているのです。
また食べ物の消化・吸収・代謝に関わるホルモンや酵素の材料にもたんぱく質が必要なため、不足すると疲労感やうつ症状などが現れることもあります。
肌のターンオーバーとは肌の新陳代謝のことです。たんぱく質は皮膚を作る材料となるため、不足状態では新しい肌を作ることができません。
<肌のターンオーバーの仕組みを詳しく知りたい方はこちらがおすすめ>
私たちの毛髪や爪もたんぱく質から作られています。不足することでパサついた髪や、割れやすい爪の原因となってしまいます。
コラーゲンは肌の真皮を構成する重要なたんぱく質であり、肌を支える役割を担っています。
紫外線などの刺激によって肌のコラーゲンが壊されると、シミやシワの原因になります。
<コラーゲンを食事で補う方法はこちらがおすすめ>
肌の血色が悪い、クマが気になるという方は貧血が原因になっているかもしれません。
貧血対策には鉄分のイメージが強いと思われますが、たんぱく質も血液を作る上で欠かせない材料なのです。
たんぱく質が慢性的に不足し栄養不足状態になることでむくみがでることがあります。
これはたんぱく質不足などにより血液中のアルブミン(たんぱく質の一種)が減ることで、浸透圧の関係で水分が血管の外側に流れ、むくみにつながるというメカニズムです。
たんぱく質はあらゆる食品に含まれています。大きく分けると、肉・魚・卵・乳製品などに含まれる動物性たんぱく質と、大豆・穀類・野菜などに含まれる植物性たんぱく質があります。
たんぱく質は身体の中でアミノ酸に分解されますが、人を構成するアミノ酸は約20種類あります。
そのうち体内で充分に合成できないアミノ酸を必須アミノ酸といい、これらを食事からバランスよく摂取することが重要です。
一方、穀類や野菜などに含まれるたんぱく質は必須アミノ酸を充分に含んでいるとはいえませんが、動物性たんぱく質と組み合わせて食べることで、不足のアミノ酸を補うことができます。
そのため、植物性たんぱく質は動物性たんぱく質と組み合わせて摂ることでたんぱく質を効率よく身体に取り込むことができるのです。
before:フルーツ+トースト
↓
after:フルーツ+トースト+目玉焼き
before:パスタ、サラダ
↓
after:パスタ、サラダ、チキンソテー
などと、たんぱく質が含んだ1品をプラスしてみると、肌に良い食習慣となります。
日本人の食事摂取基準では、18歳以上の女性の推奨量としてたんぱく質は1日50gとされています。下記にたんぱく質を1日50g摂取できる1日の食事例をあげてみます。
〈朝食〉
・食パン6枚切り1枚:5g
・卵1個:6g
〈昼食〉
うどん1玉:6g
豚の冷しゃぶサラダ(豚ロース60g):11g
〈夕食〉
ごはん1膳:4g
鮭の塩焼き(1切れ80g):18g
〈合計〉50g
1日50gというと案外簡単に摂取できますよね。
たんぱく質の必要量はさまざまな条件によって左右されます。
たんぱく質が不足すると、肌荒れやシミ・シワの原因になりますので、下記の4つのいずれかに当てはまる場合は通常より多めにたんぱく質を摂取するようにしましょう。
エネルギーが不足していると、たんぱく質をエネルギーに変えることになり、身体の組織を作るためのたんぱく質が足りなくなります。
また、たんぱく質の摂取を心がけている方のなかには、プロテインバーやプロテインドリンクを食事の代わりにしていたり、ごはんなどの主食はとらずに、ささみや鶏胸肉などを中心に摂っているという声もありますが、これは大きな間違いです。
炭水化物や脂肪の摂取を極端に控えることでエネルギー量が不足し、たんぱく質の必要量が増えてしまうからです。
激しい運動はたんぱく質の必要量が増えます。そのため、たんぱく質を積極的に補給しましょう。
また、適度な運動は身体の組織をつくるためのたんぱく質の利用効率が高まるため、たんぱく質の摂取量を増やす必要はありません。
活動量が少ないとエネルギー消費量は減るため、摂取エネルギーもその分減らさなければ太ってしまいます。
しかし、たんぱく質の必要量は増えるため、たんぱく質を減らしすぎてしまわないように注意が必要です。
怪我や風邪がなかなか治らないという方の中にはたんぱく質が不足している場合があります。
感染症や外傷の程度にもよりますが、エネルギー必要量が増える場合もありますので、このようなときには食事を節制しすぎないことが大切です。
食欲がないときには、卵がゆやヨーグルト、アイスクリーム、牛乳、豆乳などでたんぱく質やエネルギーを摂取してはいかがでしょうか。
反対にたんぱく質の必要量が減る場合はどのようなときでしょうか。
これは「糖質のたんぱく質節約作用」と呼ばれ、古くから知られています。
これはインスリン分泌により、たんぱく質の分解が抑えられること、またエネルギーとしてたんぱく質が使われず身体の組織を構成するために有効に利用できるためです。
膵臓から分泌される糖代謝に関わるホルモン。体内でブドウ糖をエネルギー源として利用するために、血中のブドウ糖を細胞に取り込む働きをする。
日本ではたんぱく質の上限(耐容上限量)は定められておりませんが、摂りすぎは以下のようなリスクがあります。
たんぱく質をエネルギーとして使われる際に発生する残りカス(尿素窒素)が腎臓から排泄されるため、たんぱく質の過剰摂取は腎臓に負担がかかります。
すでに腎臓疾患がある方はたんぱく質制限が必要な場合があるため、かかりつけの医師や管理栄養士の指示に従ってください。
たんぱく質の過剰摂取は、カルシウムの尿中排泄量を増やすことがわかっており、将来的に骨粗鬆症につながる可能性があります。
たんぱく質を過剰摂取することで、インスリンの働きが悪くなることがあるとされています。
インスリンには血液中の糖を身体の細胞に届ける役割があり、働きが悪くなることで糖代謝がうまくいかず糖尿病になることがあります。
肌や髪など身体の組織を作るために、たんぱく質が欠かせないことはわかっていただけたかと思います。
ビタミンB6は体内でたんぱく質を合成したり、たんぱく質をエネルギーとして利用する際に必要な酵素を助ける役割をしています。そのため、たんぱく質を沢山摂れば摂るほどビタミンB6の必要量もアップします。
<ビタミンB6が不足することにより起こる肌トラブルを詳しく知りたい方はこちらがおすすめ>
ビタミンB6はさまざまな食品に含まれますが、特にレバーや魚類や肉類に多く含まれます。
まぐろ、さんま、かつお、レバー、鶏肉、バナナ、アボカド、玄米、赤ピーマン
また腸内細菌からも作り出されるため、腸内環境をよく整えておくことも大切です。
<肌荒れと便秘の関係・便秘解消の方法が知りたい方はこちらがおすすめ>
日々の食事ではたんぱく質食品ばかりに偏らず、ビタミン・ミネラルの豊富な野菜や海藻も一緒に摂取することでたんぱく質を効率よく取り込む事ができるのです。
美肌や美髪、健康的なスタイルを手に入れるためにたんぱく質を意識しているという方は多いはず。しかし、もったいない摂り方をしている方も多いのが実情です。
プロテインバーやプロテインドリンクはあくまでたんぱく質を補足するもの。まずは食事で摂取することが大前提です。
体内でたんぱく質を効率よく利用するためにも、主食・主菜・副菜のそろったバランスの良い食事が鍵となります。
意識しているつもりが台無しになっていた…なんてことがないよう、上手にたんぱく質を摂取しましょう。