年齢を重ねるごとに増えるシワやたるみはコラーゲンの破壊が原因です。
美肌のためにコラーゲンドリンクを飲む方も多いですが、実はコラーゲンだけでは腸内で分解されやすく、効果を成さないのです。
![]() |
管理栄養士 岩井里香 |
---|---|
管理栄養士。これまで病院や企業で数多くの食事・栄養指導を行う。現在もクリニックにて、患者さんへの栄養指導に従事。 |
目次
コラーゲンはタンパク質の1つであり、体を作る全タンパク質の約3分の1を占めています。細胞と細胞をつなぐ接着剤のような働きをして美肌を保つだけでなく、丈夫な血管や筋肉などを作ります。
コラーゲンは肌の真皮の大部分を担っています。
コラーゲンが肌を支えているため、コラーゲンが低下すると、肌のシワやたるみを引き起こしてしまいます。
コラーゲンは、真皮を構成するタンパク質であり、皮膚を支える役割を担っています。
さらに、肌の真皮にはコラーゲン以外にも、ヒアルロン酸、エラスチンがあります。
弾性的な性質を持つたんぱく質の一種であるエラスチン、ゲル状の組織で水分を保持し、肌のみずみずしさや張りを保つ役割を果たしているヒアルロン酸、それぞれが役割を果たすことで真皮が構成されていると言えるでしょう。
肌や皮膚の構造について詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください。
肌のシワやたるみの対策には、コラーゲンは積極的に摂取したい栄養素です。そこで、コラーゲンを体内で合成するための材料となる食べ物を意識した食生活が大切です。
コラーゲンを合成するには、原料であるタンパク質と、ビタミンC、鉄が必要です。
そのため、この3つを食べもので摂取することが、シワやたるみの対策につながります。
コラーゲンドリンクなどからコラーゲンを摂取しても、腸内で分解されてしまいます。
そこで、コラーゲンドリンクを飲む場合は、ドリンク自体の成分表示を確認することはもちろん、ドリンク単体に頼るのではなく、合わせてビタミンCや鉄の摂取も忘れないようにしましょう。
コラーゲンドリンクの効果を発揮させられるかどうかは飲み方次第です。
肌のシワやたるみの対策にとりたい食べ物の中でも、コラーゲン合成の主の原料となるタンパク質のとり方からお伝えします。
タンパク質は私たちの体でアミノ酸に分解されて、体の各臓器で使われます。
アミノ酸は必須アミノ酸と非必須アミノ酸に分かれていますが、コラーゲンの合成には必須アミノ酸を積極的に摂ることが大切です。
私たちの体の中では合成できない、あるいは含有量が少なく必要量を満たすことができないアミノ酸のこと。
必須アミノ酸を多く含む食品は質の良いたんぱく質と言えます。
コラーゲンの合成を促すために、どうやって必須アミノ酸が多く含まれる食べ物を選べばよいのでしょうか。
ここで登場するのが、アミノ酸スコアという考え方です。タンパク質の質を評価する基準として、アミノ酸スコアと呼ばれるものがあり、アミノ酸スコアが100に近いほど質が良いといえます。
大豆、鶏卵、牛乳、魚類、肉類
精白米、小麦粉、野菜類、じゃがいも、貝類、タコ
ここからわかる通り、美容のために野菜中心食生活にしたり、ビタミンをサプリメントなどで補給しても、大豆や動物性食品の不足した食事ではコラーゲンを生成することはできません。
ビタミンCはアミノ酸からコラーゲンを合成するときに働く酵素の助けとして、コラーゲン合成に必要不可欠です。ビタミンCは水に溶ける性質や、ストレスによって破壊される性質を持ちます。
そのため、ビタミンCを充分に摂っているつもりでも、美肌を成すためのコラーゲンの合成に十分なビタミンCを摂れていないなんてこともあるのです。
そこで、どういった方法でビタミンCを摂取すれば良いのかを掘り下げていきたいと思います。
15歳以上の場合、ビタミンCの推奨量は1日100ミリグラムとされています。
吸収率は1日200ミリグラム程度の摂取までは90%と高く、1グラム以上では50%と下がります。また、食事から摂取する場合もサプリメントから摂取する場合も吸収率や利用率に差はありません。
ビタミンCはやジャガイモ、果物などに多く含まれます。
これらの食べ物を積極的に摂ることでビタミンCを効率良く摂取することができますが、それ以外にも食べ物の選び方を工夫してみましょう。おすすめの方法をいくつかご紹介します。
100グラム当たりに含まれるビタミンCは、緑ピーマンが76mg、黄ピーマンが150mgに対し、赤ピーマンは170mgも摂れます。
種類 |
100グラム中のビタミンC含有量
|
緑ピーマン | 76mg |
黄ピーマン | 150mg |
赤ピーマン | 170mg |
キウイフルーツにはグリーンキウイとゴールドキウイの2種類が出回っていますが、それぞれ栄養素の特徴が異なります。
グリーンキウイは食物繊維が多いのに対し、ゴールドキウイはビタミンCを多く含んでいます。グリーンキウイは1個当たりのビタミンC が85mgに対し、ゴールドキウイは140-161mgも含まれるのです。
種類 |
1個あたりのビタミンC含有量
|
グリーンキウイ | 85mg |
ゴールデンキウイ | 140-161mg |
日ごろから不足しがちな方はジュースで摂取するのも1つの方法です。
・アセロラジュース(10%果汁)コップ一杯(180g)当たり216mg
・グレープフルーツジュース(濃縮還元)コップ一杯95mg
果物やジュースの摂取では、ビタミンC以外に糖分も多く摂取することになります。糖分を気にせずにビタミンCを摂取するにはハーブティーが有効です。ローズヒップティーやハイビスカスティーがおすすめですよ。
なお、肌のシワやくすみを引き起こす糖化について、詳しく知りたい方にはこちらの記事もおすすめです。
ビタミンCは光や空気の影響を受けやすく水に溶ける性質を持つため、調理による損失が非常に大きいです。
そのため、なるべく新鮮なうちに生で食べること、茹でる場合には時間をかけずさっと湯がく程度にすることが大切です。
喫煙によりビタミンCの代謝が高まる(消費されやすい)との報告が出ています。そのため、受動喫煙を含め、喫煙者は多くのビタミンCを摂取するよう心がけましょう。
ストレスによりビタミンCが消費されてしまうため、日頃から強いストレスにさらされている方も同様です。
鉄はコラーゲンを構成する際に必要となるほか、全身の細胞に酸素を送りとどける重要な役割があります。
また、鉄が不足することでコラーゲンが合成できない以外にも、鉄不足はくすみやクマの原因にもなり、美容に欠かせないミネラルの一種です。
実はヘム鉄と非ヘム鉄の2種類に分別できます。それぞれで吸収率が異なります。吸収率を踏まえた食べ物選びが大切です。
種類 | 食べ物 | 吸収率 |
ヘム鉄 | 肉や魚に多い。 | 吸収率が良い(約30%)。 |
非ヘム鉄 | 野菜や穀物などの植物性食品や鶏卵、乳製品に多い。 |
鉄吸収率が悪い(約5%)。 |
月経がある女性では1日10.5mgが推奨されています。
体内には必要以上に吸収されない仕組みが備わっており、吸収率も低いため、通常の食事では摂りすぎを心配する必要はありません。
しかし、サプリメントなどで過剰に取り続けると嘔吐など引き起こす可能性もあります。
ビタミンCは非ヘム鉄をヘム鉄に変えるのを助ける作用があります。
また、肉や魚には鉄の吸収を促す物質が含まれます。そのため、食後にフルーツを食べることや野菜と一緒に肉や魚類を食べることで、効率よく鉄を摂取することができるのです。
レバー、赤身の肉や魚、一部の緑黄色野菜、あさり、シジミに多く含まれています。
鉄分が多いとされているレバーですが、その中でも豚レバーがオススメです。100g当たり牛レバーは4mg、鶏レバーは9mgに対し、豚レバーには13mgもの鉄が含まれています。
種類 | 100gあたりの鉄含有量 |
牛レバー | 4mg |
鶏レバー | 9mg |
豚レバー | 13mg |
肉類は部位によって鉄分や脂質の含有量が異なります。
例えば、脂質の多いベーコンやバラ肉に比べ、脂質の少ないヒレ肉やもも肉を選ぶことで、脂肪の過剰摂取を防ぎ、鉄分を摂取することができます。
以前は、ひじきは鉄の多い食品として有名でしたが、2015年の日本食品標準成分表から鉄の量が9分の1の値に変更になりました。
干しひじきは、ひじきの原藻を煮熟後、乾燥してつくられます。煮熟に使われる釜の素材がステンレスか鉄かにより、鉄の含有量が変わることが分析によってわかりました。
つまり以前は釜の素材として使われていた鉄の分まで、ひじきの鉄含有量として計算してしまっていたのです。
食の安心安全の観点から、最近ではステンレス製の釜が主に使われているそうです。また、比較的、鉄が多いと考えられていた切り干し大根も、同様の理由で3分の1程度の値に減少しています。
まずは欠食をせず1日3食、食事を摂ることから始めましょう。
ダイエット目的などでサラダやフルーツだけといった食生活は鉄が不足します。毎食卵や肉・魚などいずれかのタンパク質を摂取しましょう。
最近では、鉄が添加されたヨーグルトも販売されています。コンビニ食などで鉄分が摂りにくいときにはこのようなものを取り入れるもの良いでしょう。また、普段のランチに豆乳をプラスするだけでも約2mgの鉄を補給することができます。
なお、肌荒れを引き起こす原因の1つに食生活の乱れがあります。肌荒れを起こしやすい食生活と、それを改善するための方法をまとめた記事もありますので、気になる方は合わせてご覧ください。
コラーゲンは肌の真皮の大部分を成し、低下することでシワやたるみを引き起こすものでした。
コラーゲンを補うためには、コラーゲン合成の材料となる、タンパク質、ビタミンC、鉄の摂取が大切です。