近頃、少食化や糖質制限、偏食、運動不足などで便秘に悩む方が増えています。
便秘は肌荒れの原因になり、美容に大敵です。下記のいずれかに当てはまった方は腸内バランスが乱れており、便秘の可能性があります。
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管理栄養士 岩井里香 |
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管理栄養士。これまで病院や企業で数多くの食事・栄養指導を行う。現在もクリニックにて、患者さんへの栄養指導に従事。 |
目次
便秘による肌荒れを改善するための第一歩は、自分の便秘の種類と原因を知ることです。
一口に便秘といっても、様々な種類があります。ここでは便秘の種類を3つご紹介します。まずは自分の便秘のタイプを診断してみましょう。
弛緩性便秘は、硬く大きな便が特徴です。腸の蠕動運動が低下することにより、便が大腸内に長時間とどまり便秘を及ぼします。
痙攣性便秘は、ころころとした小さい便が特徴です。腸管の過度な緊張や痙攣により便の移送が障害されることにより起こります。
・強いストレスを抱えている方。
直腸性便秘は、硬い便が蓋をしている状態になるのが特徴で、弛緩性便秘との合併が多いです。便が直腸まで届いているのに便意が生じないために起こります。
食物繊維は水に溶ける水溶性食物繊維と水に溶けない不溶性食物繊維に分かれます。ここで注意したいのが、便秘だからと言ってやみくもに食物繊維をとればよいわけではないことです。
便秘の種類 | 改善のポイント |
弛緩性便秘 | ・食物繊維をたっぷりとる。 |
痙攣性便秘 |
・不溶性食物繊維を控える。 ・水溶性食物繊維をとる。 |
直腸性便秘 |
・水溶性食物繊維をたっぷりとる。 |
このように、便秘の改善のためには、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維をしっかり見分けることが大切なのです。
水溶性食物繊維は便を柔らかくする働きをします。そのほか、腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を整える、コレステロールの吸収を妨げる、血糖値の上昇を緩やかにするなどの効果もあります。
水溶性食物繊維が多く含まれる食品は次の通りです。
エシャロット、納豆、こんにゃく・寒天・果物・インゲン豆、アボカド、モロヘイヤ。
不溶性食物繊維は、便の量を増加させる、腸を刺激して腸の蠕動運動を盛んにするなどの働きをします。
不溶性食物繊維が多く含まれる食品は次の通りです。
インゲン豆、ひよこ豆、おから、ごぼう、みそ、酒麹、さつまいも。
女性は食物繊維を1日18グラム以上とることを目標にしましょう。各食材の食物繊維の含有量はこちらです。
この数字からもわかる通り、1つの食材で食物繊維を十分に補うのは難しいです。
そのため野菜やキノコ海藻類を意識してとることが必要になります。そこで、次の章では野菜で食物繊維をとる際のコツをご紹介します。
野菜で食物繊維をとる場合、1日に350グラムが目標となります。
生野菜であれば両手に山盛りいっぱいを1日3回が目安です。このうち両手にいっぱいは緑黄色野菜でとれると理想的と言われています。では、どのようにすれば効率よく野菜を摂取できるのでしょうか。
栄養素のなかには水に溶けやすい物質もありますが、スープであれば栄養素を無駄なく摂取できます。冷蔵庫の余り物をなんでも入れて、具沢山スープにしましょう。
ミックスビーンズや大豆を入れるとボリュームにつながりダイエットにも効果的です。
生野菜ではカサが多く、毎日摂取するのは困難です。火を通した調理法をすることで、両手一杯の野菜も片手一杯程になり、無理なく摂取できます。
特に緑黄色野菜は炒めることでビタミンの吸収がアップします。ダイエット中は茹でる、蒸す調理をすることでカロリーを控えることができます。
火を使うのが面倒なときは、電子レンジを使用するのも便利ですよ!
野菜不足の方に多いのが、忙しくて野菜を切るのが面倒、買っても腐らせてしまうという方です。そんな方には乾燥野菜や、冷凍野菜を常備させておくのがおすすめです。
例えば、インスタント味噌汁に乾燥野菜をたっぷりいれるだけでもミネラル補給が期待できます。
きのこ類は冷凍しておくと旨味も増し、炒め物やスープなどに手軽に入れられるため便利です!
自炊が難しい方はコンビニやスーパーの惣菜やカット野菜を利用することを考えましょう。
外食が多い方は、まずは野菜を摂りやすい定食を選んだり、サラダを追加するなど心がけましょう!
食物繊維の中には人工に作られたものもあります。
飲料など幅広く利用されているものにポリデキストロースと言う人工の水溶性食物繊維があります。
こちらも食品の食物繊維同様の生理作用がありますが、天然の食物繊維と比べるとその作用は弱いと考えられています。
私たちの体には約400種類100兆個の腸内細菌が住み着いています。
そのなかでも腸内環境整え、免疫力を高める細菌を有用菌と言い、近年食品によって有用菌を増殖させる試みが行われています。一方で、食中毒などの原因になる腸内細菌を有害菌と言います。
前の章まででご紹介した、食物繊維や野菜を十分にとったバランスのよい食生活をすることで、有害菌よりも有用菌を腸内で優位に保つことができれば、腸内細菌は便秘を防ぎ美肌を保つように働いてくれます。
例えば、腸内細菌は難消化性糖質(消化酵素により消化されない糖質)を取り込んで酪酸や酢酸などを作る役割があります。酪酸や酢酸は、大腸での水やナトリウム、カリウム、マグネシウムの吸収を盛んにし、腸管運動を高めるなど便秘を防ぐ様々な働きを持つと考えられています。
さらには、腸内細菌の酵素の働きによって美肌に重要な役割を持つビタミンB 6やビタミンK、ビオチンなども作られます。このように、腸内細菌は便秘による肌荒れを改善するために重要な役割を担っているのです。
食品には、体内で消化されるものとされないものがあり、それぞれプレバイオティクス、プロバイトティクスと呼ばれます。
消化されない食品成分のことをいい、水溶性食物繊維、オリゴ糖などが含まれます。これらの難消化性糖質は腸内細菌によって発酵受けやすく、その結果腸内は酸性状態となり酸性に強いビフィズス菌や乳酸菌が育成されます。
乳酸菌やビフィズス菌などの生きた菌を含む食品のことを言います。生きたまま腸内に届いた乳酸菌は善玉菌を増やし、悪玉菌を減らす効果があります。
乳酸菌は熱や胃酸に弱く、調理や胃を通過するまでに死んでしまうものも多くあります。最近では乳酸菌の死骸も腸内の免疫に刺激を与える、体内の悪玉菌を吸着して排泄する効果があると言われ、腸内フローラのバランス改善に効果的だとわかっています。
以上のことから、腸内環境を整えるには食物繊維やオリゴ糖の摂取を始め、ビフィズス菌や乳酸菌を摂ることが重要なのです。
腸内細菌を整えるためには、乳酸菌を摂取することが大切です。乳酸菌は、動物性乳酸菌と植物性乳酸菌に分かれます。まずはそれぞれの特徴と、代表的な食品はこちらです。
種類 | 特徴 | 食品 |
動物性乳酸菌 | 毎日摂取しやすい乳製品に多いが、熱や酸に弱く、生きたまま腸に届きにくい。 | ヨーグルト、チーズ、発酵バター。 |
植物性乳酸菌 | 生きて腸まで届きやすいが、塩分が多い。 |
漬物、納豆、キムチ、醤油、味噌、甘酒。 |
動物性乳酸菌と植物性乳酸菌はどちらもメリットデメリットがあるため、バランスよく摂るよう心がけましょう!
また、肉類の食べ過ぎには注意が必要です。乳酸菌が善玉菌を増やすのに対し、肉類は悪玉菌の餌になります。
肉類を多く食べるときには食物繊維の多い野菜をたっぷりと食べ、翌日は魚や大豆製品を摂るなどバランスが偏らないよう意識しましょう!
ここまで便秘による肌荒れを防ぐ方法と改善策をご紹介しました。最後におさらいとしてお伝えしたことをまとめます。
このように、便秘による肌荒れを防ぐにはやはり食事が大事です。